トルコ・リラ/USドルの為替レートの推移(1980~2024年)


トルコで使用されている通貨は「トルコリラ」と呼ばれ、国内FX投資家の間で非常に人気が高い新興国通貨の一つです。その魅力は何といっても政策金利の高さです。2019年夏には、トルコ中央銀行(TCMB)が政策金利を24%まで引き上げ、FX業界に一大ブームを巻き起こしました。近年は一時利下げを行う局面もありましたが、現在は再び利上げ政策に舵を切っています。足元のトルコの政策金利は50.00%に設定されており、日本と比較すると魅力的な高金利と言えます。トルコリラはスワップポイント獲得を狙った長期保有が多い傾向にあり、トルコリラと日本円を組み合わせた「トルコリラ/円」が投資家から選ばれる理由は、ここにあります。
トルコリラ/円のリアルタイム為替チャートは


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足元のトルコリラ/円は、おおむね4.4円~6.6円で推移しており、近年は特に荒れた値動きとなる局面もみられました。2018年8月に米国がトルコに対して制裁関税を課したことを発端としたトルコショックは有名です。また、2021年にはエルドアン大統領による中銀総裁の解任や、リラ建て定期預金の為替差損を保証する「預金保護策」の発表を受けて、トルコリラ/円は乱高下しました。さらに、同年後半からはインフレ高進下ながら、景気浮揚を優先させるため利下げを行う「非伝統的な政策」を推進したことで、対ドルでトルコリラ安を進行させる大きな要因の一つとなり、金融政策への介入なども問題視されてきました。

しかし、2023年のトルコ大統領選挙での勝利後、エルドアン新政権の誕生を契機に潮目が変わっています。中銀総裁の交代や内閣改造が実施され、中でも過去に副首相・財務相を歴任した、メフメト・シムシュキ財務相の就任は、マーケットでは金融政策転換への期待感が広がりました。そして、トルコ中銀は同年6月の金融政策決定会合にて、これまでの異例の緩和政策を終了し、2年3か月ぶりの利上げを決定しました。その後も政策金利は段階的に引きあげられ、2024年6月時点で50.0%まで上昇するに至り、金利面の優位性を大きな支えに、トルコリラ/円は持ち直し基調を印象付けています。

長期にわたって下落傾向が続いてきたトルコリラ / 円ですが、足元で環境に改善がみられます。2023年の大統領選挙と総選挙後の内閣改造を経て経済チームが一新され、教科書的な政策運営に舵を切りました。トルコ中銀は2023年6月に利上げに転じ、8会合連続で政策金利を引き上げインフレの抑制に努めました。2024年2月に据え置き、3月に再利上げを行ったのち、4月・5月と政策金 (1週間物レポ金利) を50%に据え置いています。声明文では、インフレの基調的な低下が顕著かつ持続的に観察され、インフレ期待が予想レンジに収束するまで引き締めスタンスを維持し、インフレ悪化が予想される場合には利上げを辞さない構えを見せています。政策効果によりやや内需の減速がみられるほか、インフレ期待が低下してきました。年後半には実際のインフレ率も鈍化を予想する声もあります。
また、政府も緊縮財政に転換。フィッチ・レーティングスが3月に長期外貨建て発行体デフォルト格付けを「B」から「B+」に、5月にはS&Pグローバルも「B」から「B+」への引き上げを実施するなど、国際金融市場における評価が高まったことがわかります。これを受けて海外投資家によるトルコ国債への投資も増えています。2024年3月末の地方選挙では与党が惨敗しましたが、地方選を通過したことで2028年の大統領選挙まで大きな選挙の予定がなく、長い目でインフレの抑制を行っていけるという安心感につながったことから、トルコリラ / 円相場は底打ちの兆しを見せ、2024年6月現在1トルコリラ=4円台後半となっています。
ただ、3月末の地方選挙にかけて一段と安値を切り下げていたことでわかるように、長期にわたるリラ安で国民の通貨リラに対する信認が失墜していることや、インフレによる国民生活の疲弊など問題は多く残されており、一段の上昇には時間がかかりそうです。インフレ率も2024年5月には75.5%と高水準で、ここから利上げの効果が出て順調に低下するのかはまだわかりません。最低賃金の大幅な引き上げやエネルギー価格の高止まりなどからインフレの収束が遅れるリスクは考えておくべきです。また、政策運営やパレスチナ問題を巡るエルドアン大統領の発言には引き続き注意が必要でしょう。
過去の動きを振り返ってみますと、2008年9月のリーマンショックを受けて、トルコリラの対円相場は90円台から50円台に急落。その後もじりじりと値を下げ、2016年ごろからは対米関係の悪化が目立つようになり、2018年8月には米国人牧師の拘束問題で米国からトルコに対する制裁が発動されたことから、トルコリラ / 円は15円台まで急落しました。エルドアン大統領が中央銀行総裁と副総裁を指名する権限を自身に与えたことなどから、金融政策への介入強化が不安視されたことも理由のひとつです。その後利上げや介入でいったん戻す場面もありましたが、コロナ禍で観光収入が途絶え経済が悪化したこともあって2021年末にかけては6円割れ手前まで大幅に下落しました。
エルドアン大統領の独特の考えにより、高インフレの中で中央銀行に利下げを迫るという状況で、2022年8月には、前年比+80%を超える厳しいインフレ状態の中で利下げが再開されました。2023年2月には大きな地震に見舞われ、国内経済下支えのためさらなる利下げが行われました。
急激なインフレにより家計が疲弊する中で、2000年代高成長の立役者だったエルドアン大統領の人気にも陰りが見られ、2023年5月の大統領選挙ではエルドアン氏が勝利したものの初めて決選投票に持ち込まれました。議会選挙でも与党が議席を減らし、経済政策の変更を余儀なくされました。金融引き締め容認派のシムシェキ財務相が任命され、その財務相推薦によると言われる新中銀総裁にエルカン氏も就任し、市場の期待感は高まりましたが、シムシェキ財務相の要請でリラ買い介入が停止されたことでリラが急落、6月にはトルコ中銀が政策金利を8.5%から15%に引き上げましたが、引き上げ幅が市場の期待を大幅に下回ったことでトルコリラ / 円は5円台半ばと安値を更新しました。
その後、連続して大幅利上げが行われるとリラ相場はそのたびに反発、やや落ち着きを取り戻すものの、なかなか低下しないインフレや為替介入のための外貨準備の枯渇などの不安が残ったことで、リラ安傾向は止まりませんでした。2024年3月に地方選挙を控えて、利上げに伴って政権の支持率が低下した場合には、エルドアン大統領が再び金融政策への介入を強めるリスクも意識されました。構造的な貿易赤字がリラの下押し圧力となる一方で、大統領選挙前のバラマキ政策や大地震の復興に伴って拡大した財政赤字の抑制は容易ではなく、インフレ抑制のためにさらに追加利上げを行えば庶民の生活への圧迫は強まるという難しい状況の中、2024年3月にトルコリラ / 円は史上最安値4円50銭台を記録。対ドルでは4月に最安値を更新していました。

アメリカ ドル / トルコ リラ【USDTRY=X】:為替レート・相場

黒海と地中海、エーゲ海に囲まれ、ヨーロッパやアジアとつながりが深いトルコ共和国。トルコはヨーロッパとアジアの中間に位置するイスラム圏の大国です。特に観光業が盛んで観光収入は貴重な外貨獲得手段となっています。EU(欧州連合)加盟を目標として交渉を続けており、主要貿易相手国にはヨーロッパの国々が並びます。2020年には新型コロナウイルス感染症の影響により、トルコ経済は大きな打撃を受けるも、その後は景気の回復基調が続いています。近年は甚大な自然災害に見舞われましたが、新興国の中での経済成長率は比較的高く、将来に期待できる国と言えそうです。
トルコは原油・天然ガス等の資源輸入国ですが、実は隠れた資源国でもあります。地下には石炭やクロム鉱石などの鉱物資源が埋蔵されており、採掘コストの低い露天掘りが可能です。また近年、石油の採掘調査も開始されているほか、黒海で大規模な天然ガス田が同国により発見されるなど、資源国としてトルコが注目を浴びる日も近いかもしれません。

2024年後半にかけては、エルドアン大統領およびトルコ中銀の金融政策運営に絡んだ相場が予想されます。
トルコ中銀は2024年2月に新総裁が就任していますが、歴史的な高インフレを抑えるため、正常化路線の政策運営が継続されています。2024年6月の会合では、3会合連続で政策金利が50.0%に据え置かれ、今後の政策見通しについては、声明文にて「インフレ基調の大幅かつ持続的な低下に向け、引き締め姿勢を維持する」との考えを強調しています。中銀や経験値豊富なシムシュキ財務相の手腕による、正常化路線・原点回帰的な政策運営は、引き続きトルコリラの追い風となるでしょう。このほか、直近は緊急時に為替レートを安定させる外貨準備の増加や、大手格付け会社がトルコの格付け見通しを引き上げるなど、ポジティブな材料がみられ、海外からの資金流入を誘っています。
また、日銀の金融政策運営や見通しも押さえておきたいです。2024年3月の日銀金融政策決定会合では、マイナス金利解除とYCC撤廃が決定され、長らく続いた金融緩和路線から遂に脱却しました。今後は追加利上げを含む金融政策の動向を見極めていくことになりますが、”金利”に着目すればトルコと日本の金利差は健在でしょう。したがって、対円では両国の金利差による高いスワップポイントは投資先として大きな魅力であり、着実な経済成長の実現などの要因も踏まえ、市場におけるトルコリラ/円相場のさらなる回復に期待がかかります。

一方で、トルコリラのリスク要因として、エルドアン大統領のスタンスや言動には注意を払いたいです。仮に金融政策の急転換や、中銀の独立性維持が危ぶまれるような事態となれば、リラ売り圧力が強まる可能性は否定できません。加えて、トルコは中東イスラム圏の玄関口であるため、地政学的なリスクを考慮する必要があるほか、トルコリラは主要通貨である米ドルやユーロに比べて流動性が低く、不安定な値動きとなる局面もみられます。したがって、トルコリラ/円の取引に際しては、余裕を持った資金管理の元で、安値更新の展開も考慮してストップを置きつつ、資源開発の開始などトルコ経済の将来性や、トルコ中銀の健全な政策運営に期待したいところです。

米ドル/トルコリラ(USD/TRY) 2時間足 FX為替レート・チャート

トルコリラの最大の特徴はその金利の高さです。南アフリカランド、ブラジルレアルなどと並ぶ高金利通貨のひとつとして知られ、より大きなインカムゲインを求める投資家から人気の高い通貨です。
金利の高さは、一方でインフレ率が高いということでもあります。2022 年末、消費者物価指数 (CPI) は食料やエネルギー価格の上昇を背景に前年比+80%超という歴史的な高さを記録しました。30%台まで低下したあと再び上昇しておりインフレ圧力の高さには注意が必要です。また、通常であれば中央銀行は高いインフレを抑えるためには金利を上げる政策を導入するのですが、「イスラム金融」の考え方を持つエルドアン大統領が強硬に反対して2021年には逆に利下げを行い、中央銀行の独立性という意味で他国からの信用を失いました。エルドアン大統領による中央銀行総裁の解任でトルコリラが急落したこともありますが、2023年からは経済政策の転換が見られています。通貨当局がトルコリラ防衛策を打ち出したこともありましたが、資本統制につながるとの懸念や取引量の低下などの副作用もありました。通貨防衛、為替相場への介入もあり、外貨準備高は2024年2月まで減少基調でした。その後持ち直していますが、外貨準備高の推移にも注意を払いたいところです。
トルコはエネルギーの純輸入国であり、慢性的な貿易赤字・経常赤字になっていることも通貨安圧力になっています。
他の新興国通貨と同様、短期的に相場が急激に変動することもあります。
貿易赤字国で、国内の資金需要を満たすために海外資金の流入に依存しています。そのため、グローバルな資金の流れの変化には敏感に反応します。世界景気の悪化や金融不安の兆しなどには気を付けたいところです。
また、内政リスクや中東方面の混乱がトルコリラ相場に大きな影響を与えることもありますので、中東問題に関するニュースを注意深くウォッチしましょう。

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(2024年5月時点 トレイダーズ証券 市場部)

トルコ・リラ/USドルの為替レートの推移(2021年1月~2024年11月)

内政面では、宗教を政治に持ち込まない世俗主義の政党と、宗教主導の政党との間で争いが起きることが多く、軍が政治介入することもありました。2016年には軍部のクーデターが失敗に終わっています。
政治面では、エルドアン氏が2003年に首相就任、2014年から大統領を務めていて、2023年5月の選挙にも決選投票の末に勝利し続投が決まりました。ロシア・ウクライナの仲介役を買って出たり、黒海経由の穀物輸送協定の締結を主導したりするなど外交面でも力を発揮しています。金融当局に強い圧力をかけていたことで知られます。

USD/TRY(米ドルトルコリラ)は、高金利通貨の一つであるため、スワップポイント投資として人気のある通貨です。しかし、米ドルやユーロ、円などに比べ流動性が低くく、為替変動リスクが高い通貨ペアでもあります。


トルコリラ/円(TRY/JPY)のチャート、スワップポイント比較

トルコは地理的に欧州とアジアをつなぐ位置にあり、中東にも隣接する貿易の要衝で、文化の交差点でもあります。15世紀にこの地にあったのはオスマン帝国。最大の都市イスタンブールは、古くはシルクロードの中継地点として栄えました。
現代も結節点ならではの外交を行っています。北大西洋条約機構 (NATO) 加盟国でありながら、非欧米軍事同盟である上海協力機構の対話パートナーであり、中露との軍事協力も行い、2022年ロシアによるウクライナ軍事侵攻では仲介役に乗り出しました。2023年にはイスラエルとハマスの衝突においても仲介に意欲を見せています。
一方で、地政学上のリスクを抱えることにもなっていましたが、サウジアラビアとの関係は改善の兆しが見られ、エジプトにはエルドアン大統領が2024年2月、12年ぶりに訪問を果たし、隣国ギリシャとは2023年12月に関係改善で合意しています。長らく対立していたシリアとも隣接していますが、ロシアの仲介で関係再構築に動いているようです。
産業面では地理的特性を生かし欧州向けの自動車など工業製品の輸出拠点となっています。
トルコはNATO加盟国ですが、政府がテロ組織に指定しているトルコ分離主義勢力のクルド人のクルディスタン労働者党 (PKK) などを擁護しているとして反対してきたフィンランドとスウェーデンのNATO加盟を認めました。一方、自らはEU (欧州連合) 加盟を目指しています。

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また、トルコは慢性的な経常赤字の国であるため、外国からの資金流入に依存している傾向があります。そのため、USD/TRY(米ドルトルコリラ)の取引時には、トルコの情勢だけではなく、先進国の情勢も分析することが大切です。

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USD/TRY(米ドルトルコリラ)のトレード時には、両国の経済指標や投機筋・個人投資家の売り買いポジション状況など様々な要因を考慮する必要があります。このページではあらゆる角度からUSD/TRY(米ドルトルコリラ)相場を考察するデータをご用意しているので、是非参考にしてください。