トランプ氏、BRICS諸国に100%関税も辞さず-脱ドル推進なら
池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。
「脱ドル体制なら関税100%」 トランプ氏、BRICSをけん制
池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。
今回のパートナー国拡大におけるもう一つの大きな焦点は、東南アジア諸国の動向だ。この地域では、ASEAN(東南アジア諸国連合)創設国5カ国の国力が大きい。そのうちの3カ国(インドネシア、マレーシア、タイ)が、親露的なベトナムとあわせて、今回BRICSのパートナー国になった。特に人口やGDP(国内総生産)において圧倒的な存在感を持つインドネシアが入った意味は大きい。同国とマレーシアはを管理する重要な2カ国でもある。現在のASEANで明確に親米的で反中的な政策をとっている有力国は、フィリピンくらいだろう。残る有力国のシンガポールは、豊かな国ながら小国であるため、より穏健で中立的である。BRICSは今後、地域としての東南アジア全体を取り込んでいくための強固な基盤を獲得したと言える。これは中国にとっても大きな勝利だろう。
トランプ氏、今度はBRICSに「脱ドル推進なら100%関税」宣言
ユーラシア中央部「ハートランド」のロシアから、中東を貫通してアフリカ大陸に伸びていく加盟国の並び方は、今やBRICSの背骨と言ってもよいほど、太い柱になり始めている。ユーラシア大陸とアフリカ大陸の接合性に着目し、両者をあわせて「世界島」と呼んだのは、イギリスの代表的な地政学理論家ハルフォード・マッキンダーだったが、プーチン大統領がこのような地政学の考え方に深い関心を持っているだろうことがうかがえる。
プーチン大統領は米大統領選直後の11月7日、ロシアの都市ソチで開催されたヴァルダイ会議において、トランプ氏の暗殺未遂事件について触れながら、「命が危険にさらされた時の彼のふるまいに感銘を受けた」、「男として勇敢な態度だった」と語った。「アメリカの大統領は尊敬されなければならない」と主張するトランプ氏に、素直に敬意を表した形である。そして、トランプ氏との対話の可能性を排除しない姿勢を示した。ただし、すぐにロシアの政策を劇的に変更するわけではない、という慎重な態度だ。これは何を意味するのか。
脱ドル化を推進すれば「100%の関税」、トランプがBRICS諸国に警告
なおアルジェリアについては、昨年に加盟に強い意欲を見せながら、エジプトの加盟だけが認められたことに立腹し、BRICSへの態度を硬化させたと伝えられていた。これを考慮して、北部からは特別に二つの有力国が加盟する流れとなった。このような調整措置は、今後も引き続き導入されていくだろう。それにしてもアフリカの準地域の仕組みを十分に意識したうえで、拡大が進められていることは、戦略的な計算を施したうえでの拡大であることを印象付ける。
今回新たにBRICSのパートナー国となった13カ国のうち、トルコは、ユーラシア中央部のロシアと中東を結ぶ地域大国のパートナー加盟国として、注目に値する。旧ソ連圏からもベラルーシ、カザフスタン、ウズベキスタンがパートナー国となった。BRICSを通じてロシアが立場の強化を図ろうとしている動きがさらに明確になった。
アフリカからは、カザンに代表を送っていなかったナイジェリア、ウガンダ、そしてアルジェリアがパートナー国となった。アフリカでは、北部・東部・中部(大湖地域)・南部・西部という「準地域」の考え方が強く、大陸全体を扱うアフリカ連合(AU)も、5つの準地域機構と密接な結びつきをもって運営されている。南部アフリカの南アフリカ、昨年加入した東部のエチオピアに加えて、西部のナイジェリア、中部(大湖地域)のウガンダが加盟する手続きに入ったことによって、BRICSはおおむね5つの準地域から加盟国を迎え入れる仕組みが整うことになった。
[PDF] BRICS諸国のʻ脱ドル化ʼ策 の現実と中国の対外金融の 限界
プーチン大統領は、制裁を科せられたがゆえに、かえって敵対的な「脱ドル化」の政策を国際的に推進するようになった。その「脱ドル化」実現のための最重要の国際的枠組みが、BRICSである。トランプ氏は、プーチン大統領の挑戦的な政策の含意を深刻に受け止め、対処したい旨を表明したわけである。
【ワシントン時事】トランプ次期米大統領は30日、中国やロシアなどの新興国で構成するBRICSに対し、米ドルから離れる動きをすれば「100%の関税を課す」と主張した。貿易決済などで脱ドルを進めるBRICSをけん制した。自身のSNSに投稿した。
トランプ氏は「BRICSが新通貨をつくらず、強大なドルに代わる他の通貨を支持しないと約束するよう求める」と強調。「BRICS(の通貨)が国際貿易(の決済)でドルに取って代わるチャンスはない。それをしようとする国は米市場にさよならをしてもらう」と書き込んだ。
BRICSは10月の首脳会議で貿易決済などでの「脱ドル」を議論。「共通通貨構想」も取り沙汰されている。基軸通貨ドルの国際的な地位が下がる中、トランプ氏には米国に対抗して新興国への影響力を広げようとする中ロをけん制する狙いもあるとみられる。
欧米諸国はウクライナに侵攻したロシアに対する経済制裁として、国際決済ネットワークからロシアを排除。さらに、欧米に保管されていたロシアの資産を凍結した。こうした動きを受け、新興国の間では「ドル依存」への警戒感が高まり、一部では中国の人民元建て決済が広がっている。
米ブルームバーグ通信によると、トランプ氏はドル以外の通貨で貿易決済をする国への制裁措置を議論。同盟国も対象に含め、輸出規制や関税を課すことが検討されているという。
〔写真説明〕BRICS首脳会議に参加した中国やロシア、インドなどの新興国首脳ら=10月23日、ロシア中部カザン(AFP時事)
一部の新興国は、米ドルが支配する世界金融システムからの脱却を試みている。 Michael Raines
グランビルの分析によれば、米ドルは2023年、ユーロ圏外における国際決済の60%を占めていた。一方、貿易金融(銀行や企業が貿易に用いるさまざまな製品を含む)におけるシェアは80%、国際外貨準備は60%だ。
BRICSに共通通貨? 脱「米ドル依存」では一致も、高いハードル
そうは言っても、グランビルの報告書によれば、ロシア以外の中央銀行がCBDCシステムへ参加することにより、国際準備通貨における米ドルの地位を支える重要な柱(ユーロ圏外での国際決済)が弱まる可能性があるという。
ロシアと中国の「脱米ドル」加速、BRICSにデジタル通貨導入へ
BRICS首脳会議は、アメリカとその同盟国が、中国の輸出に対して攻撃的な姿勢を強めている状況で実施されることになる(アメリカとその同盟国は、中国は過剰生産状態だと批判している)。さらに、アメリカ政府は、ロシアが絡む決済を処理した銀行に対して二次制裁を課している。これは、中国人民元などのローカルな通貨で処理された場合も対象となる。
BRICSと金がドルの覇権に公然と挑戦した14年以来、世界のドル準備高は2002%減少した。
プーチン大統領は、基本的には、トランプ政権の誕生を歓迎するだろう。だが、迷いもあるはずだ。アメリカとの敵対関係を前提に「脱ドル化」の政策を推進し、その流れにそって、10月にロシアで開催したBRICS首脳会議も成功させた。トランプ氏が当選したからといって、「脱ドル化」の旗振りを突然やめるわけにもいかない。トランプ大統領から融和的な対ロシア政策を引き出しつつ、引き続き「脱ドル化」政策を模索していくために最適な方法を、見出していきたいはずだ。そのような気持ちが、トランプ氏当選を祝福しつつ、なお政策論に関しては慎重さを崩していない態度につながっているだろう。
独自の決済プラットフォーム創設を(BRICS) | 地域・分析レポート
グローバルデータTSロンバードでグローバル政治研究担当マネージングディレクターを務めるクリストファー・グランビル(Christopher Granville)が5月24日付の報告書に書いたところによれば、2024年にはドル脱却にいっそう勢いがつく可能性があるという(10月22~24日には、ロシアの都市カザンでBRICS首脳会議が予定されている)。
ロシア BRICSで目指す “ドル決済からの脱却” (油井s VIEW)
共通通貨の創設は現実的には難しいものの、BRICSはドルと決別する一手段として、地域通貨での貿易と融資の増加を求めてきた(なお、BRICSとは、構成国であるブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの頭文字をとった連合で、2024年2月には、イラン、エジプト、エチオピア、アラブ首長国連邦が新規加盟した)。
焦点:BRICs、対ロ制裁受け「脱ドル」模索 人民元に追い風か
10月22~24日のロシアのタタルスタン共和国カザンにおけるBRICS首脳会議が強い注目を集めたのは、大きくは三つの理由があったと言える。一つはプーチン大統領の国際的な位置づけ、二つ目はBRICSの拡大の行方、三つ目が脱ドル政策の方向性だ。
「脱ドルなら100%関税」=BRICSの動きけん制-トランプ氏
新興国からなるBRICSグループは、米ドルによる支配からの脱却を求めて活動している。
中ロ拡大 BRICS、通貨バスケット創設も 経済制裁の抜け穴に
一部の新興国は、米ドルが支配する世界金融システムからの脱却を試みている。
ロシアによるBRICSの米ドル放棄の推進は、正式な合意や西側金融システムの代替機能が整備されたことで重要な節目に達しました。
トランプ氏は「BRICS諸国がドル離れを進めようとする構想は終わりだ。これらの国に対し、『BRICSの新通貨を作らないし、(基軸通貨の)ドルに代わるいかなる他国通貨も支持しない』との確約を求める」と投稿。「さもなければ彼らは100%の関税に直面し、米国経済に別れを告げることになるだろう」と脅した。
トランプ次期大統領、BRICSの暗号資産による脱ドル計画を批判
一つ目について言えば、まずはロシアが開催国であったことが注目の理由であった。プーチン大統領は国際刑事裁判所(ICC)に逮捕状を発行されたため、ICC締約国への渡航が思うようにはできない。モンゴルにおける式典に出席したことは話題となったが、今月18・19日にブラジルで開催されたG20サミットは欠席した。昨年に南アフリカで開催されたBRICS首脳会議も欠席した。自国開催の場合、逮捕の恐れはないが、ロシアを嫌う国際世論が強ければ参加国数は伸び悩むだろう。たとえば欧州諸国の指導者であれば、プーチン大統領に会うだけでスキャンダルだ。実際にハンガリーのオルバン・ビクトル首相は、プーチン大統領に会った、という理由で糾弾された。
[PDF] 米中覇権競争下での基軸通貨ドルの評価 ~脱ドル化は進展するか~
トランプ次期米大統領は30日、中国やロシア、インドなど有力新興国の枠組み「BRICS」加盟国に対し、国際貿易で基軸通貨となっている米ドルの地位を揺るがすような行動に出れば100%の関税を課すと自らが運営するソーシャルメディアに投稿した。加盟国が増え、国際経済での存在感を高めているBRICSによる「脱ドル体制」の動きを、関税引き上げを材料に強くけん制した形だ。
BRICS:米ドルが「期限」に近づき、金とビットコインが代替案になる
トランプ氏と経済顧問らは、ドル以外の通貨による二国間貿易を目指す国について、同盟国や敵対国を問わず、罰する方法を議論してきた。事情に詳しい関係者によると、輸出規制、為替操作国認定、貿易課税などの選択肢を検討している。
BRICsによる脱ドル化の野望は成就するのか?|Academic Agent
2024年10月にロシアのカザンで開催されるBRICS首脳会議は、議長国ロシアがその主導権を取りつつ、グローバル・サウス(中露以外の途上国)を中露側に取り込もうとする場となりそうだ。多くのグローバル・サウスの国々が招待されることが想定され、それぞれの国の思惑も首脳会議の動向を理解する上で重要な要素となってくる。経済制裁を科せられたロシアは「脱ドル化」をはじめとして、非・西側の枠組みへの賛同の広がりを誇示したい動機に満ち溢れている。他方で、同会議の参加国の多くは非・西側はともかくとしても、反・西側とは見做されたくはないであろう。本レポートでは、BRICSという枠組みの多様性と内在する矛盾、内外の力学を探っていく。
159カ国がBRICSの脱ドル化に向けた新決済システムを支持!
トランプ氏は選挙遊説中、各国が米ドルから脱却する動きについて高い代償を伴うものにすると公約していた。